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何に影響されたのか、よく見掛ける感じのネタ。
00の兄×アーデですが。
男と男の話なのでご注意をば。




*****


 再会は唐突に訪れた。それは予期せぬどころか、願っても無いなど全否定したい恐ろしい好機。
 隻眼を見開きみっともなく口を開けては呆然と立ち尽くす。そんな情けない姿を晒したのは一方だけで、相手方は一瞥だけでしらりと食事を再開していた。

 数年ぶりに目にする彼は大人びて見えた。いや、それは正確には正しくは無い。年を重ねる事をしない彼等は、肉体はその昔一緒に居た頃どころか、初対面とさえ差異のない筈だった。にも拘わらず相変わらずの美貌に貫禄や威厳を感じるのは、一人の人間として彼が経験したものに因るのだろう。自分の知らぬ間に身に着けられた色気すらある厚みに、権利無く男のグラスが苦くなる。
 心成し照明の落とされたカウンターに、椅子を二つ空けて肩を並べている。隣に座る勇気も甲斐性も無かった。
 地位も無く立ち場でもないのに、目は様子を窺ってしまった。まず紺に近い紫色の髪が随分と伸びている。両耳の辺りで一房ずつ残し、後は纏めて後頭部で結ってある。艶やかな一連が真白のシャツ生地にしなやかに走る。
 体型は記憶にあるものと殆ど変りは無い。変わらない貌は表情が豊かになった。鋭いだけだった視線は柔らかくも温かくも色味を移ろわせ、浮かぶ光はきちんと地に足をつけ、強い。きびきびとした所作で食事を摂りながらも、カウンター越しの店員と会話を楽しむ程のゆとりが今の彼にはある。
 変わらない筈の人間が、変わった。
 途端、身勝手に湧く感慨と寂寞。喉が情けなくも酒に締められる。
「――取り合えず、生きてはいた様で。何よりです」
 溜息の後の平坦な、しかし触り良い声に、空の笑いが漏れた。会話の初手すら投げ掛けて貰って、最早自分には反駁も取り持つ事も不可だ。嫌なのなら時間は充分にあったのだ。言い逃れるか、この場から去ってしまえば良かった。望むのなら、奮い立たせるべきだった。
 そのどちらも、何も出来なかった男には拒否権も選択権も有りはしない。隣人の為すがままに応じるのみ。
「……ああ、おかげさんで、な。元気にしてたか?」
「体調について言うならば、ええ。何ら問題はありません」
 体調以外は、と問おうとして、それは己の後ろ暗さが声を消した。隣の彼は意に介した様子も無くフォークを置き、グラスを傾ける。
「……お前、酒なんて飲んだか?」
「この四、五年で覚えました。強過ぎないものであれば、それなりに」
「飯と一緒に、ってのはどうかと思うがね?」
「拘りがある訳でもありませんし、一応食事は終わりました」
「あっそ、」
 四、五年、ね。口内で呟いたつもりのそれは聞こえてしまっていたらしく、ふと視線が投げられた。
「……もうそんなに経つもんかね」
「正しくは、もっと、ですが」
 四年、五年より、もっと。
 そんな事は、忘れた日など無かった。彼の側を離れてから幾ら経ったのか、なんて。
 長い長いと感じていた離別の日々が、こうして形と意味を持って目の前に座っている。すると急に惜しくなった。自分から離れて置きながら勝手も馬鹿らしい程だが、少しでも本人の口から聞き出して味わいたくなる。
「何、してた?」
「やるべき事を。……大分落ち着き始めた三年半くらい前から、みな徐々に地上での生活の頻度を増やすようになりました。定住先を構えたのは一年前です。みな定期連絡は取りながらも各々仕事をし、生活しています。僕はヴェーダの相手が殆どですが、手が空いた時にはアルバイトもしたりしています」
「……皆が地球に下りたのはともかく。よくお前さんまで下りたな」
 心底の本音だったのだが、台詞にのった意外具合が殊更に伝わったらしく、彼こそ意外そうにゆったりと瞬いてみせた。そうして口角を上げ、滲む様にやんわりと笑む。それは恰も幼子に言い聞かせる態。
「ヴェーダの相手は地上でも出来る様になりましたし。そこで僕一人、上に残っていても仕方ないでしょう?」
「……へ、え?」
(――誰だ、こいつは?)
 自分の知る彼は、こんな男だったか。
 こうも柔らかく喋り、親しみ深い表情を見せ、ましてや「ヴェーダの相手」なんて砕けた言い回しをしてみせる。落ち着き愛嬌もある、しっかりと芯の据わった本当の一人の人間。
「そういうあなたは?」
 まるで置き忘れられた子供の様に呆然としていれば、今度はお鉢を回された。三十を越えて置き忘れられた心境なんて、と眉間が因る。置いて行ったのは自分の方なのに。
「ああ、うん、ぼちぼち? 適当に仕事して、適当なとこに住んで、……そんな具合で、生きてるよ」
「へぇ? ……まあ、あなたなら何処でも上手くやっていくんでしょうね」
 言い結んだタイミングで、隣の彼の手がグラスを置いた。カウンターが軽くタン、と鳴る。知らず会話に必死だった様で、気付けはそのグラスは空いていた。それに反し、自分のグラスは先から幾らも減っていない。緊張か、余裕の無さが明らかだった。
「では、僕はこの辺で」
「……へ、ええっ!?」
 美貌の彼はすんなりとスツールから立ち上がり、後を濁さずレジへ向かう。一連なりの所作は心残りなど微塵も感じさせない。
「えっ、ちょ、まっ……!」
「今日も美味しかったです、マスター」
「嬉しい事言ってくれるね、また来てよ、兄ちゃん」
「ええ、勿論。また」
「ちょ、ちょンま……っ、――ティエリア!」
 堪らず口にした名前。綴るのは離れていた年月と等しい。唱える事すら苦しく寂しく、罪深く思え、ずっと封印してきた。いや、今思い返せば単に怖かっただけかもしれない。彼が側にいない、会えない、そしてきっと少なからず傷付け、恨まれているに違い無い現実が。
 だが今現在の男には、そんな思考をする時間的な暇も心理的なゆとりも全く存在しない。
「? 何です?」
「何です、じゃねー! 何でそんな普通なんだ、いや昔としたら全然普通じゃねーけど変わってっけど! 大人になってっけど!」
「それは……有り難うございます」
「いえいえ、って違うっつのだから!」
「だから何です?」
「だから! ……俺達、その、……久しぶり、だよな?」
「ええ、そうですね」
「随分酷い最後だったよな?」
「最後も何も。別れも無く突然消えましたね、あなたが」
「だよな!? じゃあ何でこんな、懐かしい級友と再会しただけみたいな、いやそれよりもっと酷い! 俺が言える義理じゃないが!」
「はあ」
「ただの級友じゃ、――仲間だけ、じゃ、なかったよな……? 俺達」
 思わず怒鳴ってしまった勢いを鎮めると、目の前の美貌がスッと表情を消した。そうなると、そこに在るのは恐ろしくも美しいまるで人形。じり、と喉の奥が捩じられる。足元の地面が削り取られていくかの恐れと緊張が一気に戻って来る。
(何故居なくなったといっそ詰ってくれ。そう、俺に、)
 彼にとって大した事じゃなかったなんて、まさか。
 次に表情を消したのは男自身だった。有り余る身勝手は思い知っていたつもりだが、それでもまだ全てではなかったらしい。作り物めいて美しいティエリアに傷が成し、苦しんでいて欲しかったなど。
 余りに醜悪な我儘。露呈した自身に愕然とする。自意識の崩壊も然る事ながら、こんな姿をティエリアの眼前に晒している今が我慢ならず、怖い。
 嘆息が一つ。ぎくりと肩を揺らしながら、恐る恐る視線だけで窺う。顔を上げる意気は持てない。
 そこには男を見下す睥睨ではなく、哀しみ震える唇でもなく。ただ素直に呆れた、仕様の無い子供を包む双眸を笑いがあった。
「…………ティ、エ」
「確かに。あなたとは所謂恋人と呼ばれる間柄だと……僕は思ってましたよ」
 カラン、とドアベルが響く。ドアノブに掛けていた右手をティエリアが捻ったのだ。薄暗かった店内に眩い光が差し込んだ。
「あなたの考えなど今も昔も分かりませんが、」
 この地の夏の夕暮れは遅い。夕餉の時刻になっても、根強く青みが残っている。開いたドアの隙間から、ティエリアの上に青い空が覗いている。
「あなたが置いて行ったんです。捨てて離れたんです。そんな僕には何も出来ません。
 望む事があるのなら、あなたでどうにかして下さい。欲しいなら、あなたが戻って来て下さい。僕は何もしません。
 ああ、でも、戻ったとしても僕はもう同じ所には居ませんが。だって、あなたの仰った様に、僕は変わりましたから。――変わったんです」
 そう言い、笑う。ティエリアは酷く楽しそうに、綺麗に笑った。
 夏のからりと青い空が壮絶に似合って映る。生命力に満ち満ちた美しい人へと、ティエリアは彼の宣言通り成長を遂げていた。
 夏の夕空の下で微笑む。熱い風に結われた髪が棚引く。意志と自信に溢れた目が、真っ直ぐに男を射る。それらに甚だしく煽られた。いとも簡単に。
(……いいのか? 追い掛けて)
(捨てた俺が、お前を、本当に)
(欲しいなら追い掛けろって、そう言ってるのか?)
 欲しいなんて、渇望なんて、そんなもの膿む程在ったから、こんな現実が訪れているのだと言うのに。
「――そんな事、僕は知りません」
 なんて。上がり調子で愉快にティエリアは宣う。正直本気で口に出したくなかった本音は、またも口から零れてしまっていた。
 カラン、と再度ベルが鳴る。夏の光を背負い、ティエリアは綺麗に笑みながら隙間の向こうへと進む。
「それでは、ロックオン。お元気で」

 ――また逢う日まで?
  




*****
「(タイトル未定)」/ニール×ティエリア(←?)
い み が わ か ら な い よ 。
次いで設定も分からない。
不意に萌えた設定で思いつくままやってみた。後悔はしていない。
萌えの復興支援だ!! 支援物資に……なってない!!!!orz
格好良く兄さんをふるアーデさんが書きたかった…のかもしれない。

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