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溜まってる

ネタどもをどうにか形にして消化したいんだが、書こうとすると脱線するのはもう。
そう言えば過去書いたネタって本当にすっかり忘れるものなんですね……と本の整理をして実感。あんなもん書いてたか自分。

以下、ドラマQ.E.D.ネタ。キリは(多分)良いけどまだ完結してません……。

*****

盲点の海(1)



 空も明るい真昼だと言うのに、室内は薄暗い。四角い窓の外との対比で、影に覆われた壁は黒く見える程だ。空気はただ静かに、ひっそりと存在している。動きは殆ど無い。ただ窓から注ぐ外の世界が眩しい。
 机の脇を回り込み、燈馬は椅子に腰を下ろす。深く、ゆたりと背中が沈む感覚は、水底の砂に足を埋める様を想わせた。柔くじわりと潜り込んでいくイメージ。
 肺から吐き出された息に、机の上の紙が音を立てる。折れ曲がった四隅が小さくはためいた。昨日、帰宅した直後に着替えながら制服のポケットから投げ出した、アメリカ行きのチケット。ペンで文字の書かれたそれは、期日も過ぎ疾うに使用不可になっている。眼の端に拾い、燈馬は指先で摘み上げた。
 問い返す声は未だにあった。――行かなくて良かったのか。他ならぬ自身の声だ。
 花見は楽しみだ、可奈と居るのも楽しい。その反面、小さな不安の影も見えている。その正体に、燈馬は朧気ながら既に察しがついている。
 変わっていく自分。燈馬に訪れる変化を、その為の刺激を生むのは可奈であり、若しくはそのものだ。忙しなく巻き込まれ、有無を言わさず攫われる。けれども燈馬を引く可奈の手は、いつも楽しく温かい、穏やかな体温をしている。そんなものを与えてくれる。水面から優しく海を差す光の様に。
 その一方、温かい手に引かれながら、何故か心を冷たく撫でられる。不安が沸き出てくる時には、決まってそんな感触を得ていた。居場所が見付けられない、隣に居て良いのか分からない、そもそも隣に居たいのはどうしてか。考えれば考えるほど、足元が不安定になっていく。自分の存在が希薄になっていく心像。
 言うなれば、今まで燈馬は変化の乏しい深海の住人だった。そんな彼にとって馴染みの無い、恐ろしさを孕んだ日々でもあった。

 机に置いていた携帯電話が振動し、小刻みな音が響いた。こうも簡単に静寂は終わりを告げる。サブモニターに表示された名前は「水原可奈」。目の端に留めながら、燈馬は耳にへと当てる。
『あ、もしもし燈馬君? 水原だけど』
「はい、何です?」
『今日これから時間ある? 一緒に行きたい所あるんだ』
 口は自然、了承の返事を吐いていた。答えながら燈馬は腰を上げ、椅子から離れる。外はまだ少し肌寒いだろうと、上着を取るべくクローゼットへと足は向かった。
「どこに行くんです?」
『それがさ、近所の人から凄い沢山イチゴを貰っちゃってさ。お仏壇でも良かったんだけど天気も良いし、せっかくだからお墓まで行こうかなって。散歩でもしようよ』
『イチゴですか』
『うん。二軒先のお爺ちゃんなんだけどね、親戚から貰って、でも食べ切れないからってお裾分けしてくれたの。それがもう本当多くて、一人21個もあるんだよ、凄いよね』
 そんな食べ切れないよ、と笑う声を耳に、上着を羽織る。高目の笑い声が耳にくすぐったくて堪らず、燈馬も頬が緩む。直ぐ側で可奈が笑っているかの甘やかな錯覚。
「じゃあ、今から向かいます」
『はーい、待ってまーす』
 玄関を出ると同時に通話は切れた。財布と共に上着に突っ込み、燈馬は歩を進める。そう言えば飛行機のチケットを机に出したままだった、と数分歩いた所で俄かに思い出した。

 変化のない、時間が滔々と過ぎる密な空間。埋め尽くされて隙間など露も存在せず、何も入れず、動かず。そんな世界を生きていくと、そう思ってはいなかったなどとは、実は燈馬には言えない。変化など考えもしなかった。
(……なのに、)
 何もなければ自分を裏切る事も者もない。確実に証明され、絶対になった定理や命題。そんなものが燈馬の興味を強く引く全てで、その中で生きて来た。けれど理詰めの数学の世界であってでさえも、遥か膨大な先では揺らぎが起こるものだ。寧ろ永遠の不変や不動の方が、自然界においては不自然で恐ろしい。それを知らなかった筈は無い。ただ、ほんの小さな、個の人間への刺激や変化の影響を、そこまでの結びを失念していた。
(自分にまで反映するなんて思いもつかなかった)
 ――例えそれまでが、どんな海の底に居たとしても。
 僅かな振動が漣になって海面を揺らし、次第に増幅されたそれらが届き、聴こえる。目を醒まさせる。それは。
「燈馬くーん!」
 電話越しではない肉声が響く。家の外に出て待っていた可奈が、満面の笑顔と共に手を振っていた。
「お待たせしました」
 燈馬は可奈の目の前で足を止める。待ち切れなかったのか可奈からも数歩近寄り、当たり前の様に右手がのばされた。
「早く早く、行こう!」
 目覚めを促す波の声。それは鮮やかにして、甚く苛烈なのだろう。ただ加えて、燈馬に訪れた波は幸いにも彼を温かく、優しく包みもした。醒めた目に映ったのは、半ば強引に導く女の子の、柔らかな小さい手だった。
 目を覚ましたなら、動き出すのだろう。こうして、何度も鮮烈な覚醒を繰り返すのは、必要ながらも苦痛を伴うかもしれない。若しくは彼女の声に起こされるかもしれない。ならばその先で、温かく迎えてくれる彼女の方へ迎えられれば良いと、可奈の手を握り返しながら燈馬は仄かに願った。


*****
盲点の海/ドラマQ.E.D. 燈馬視点で対可奈
(1)ってことは(2)はあります。でもそんな長くない。今書ききらなかっただけ。

やっぱ中村燈馬イイ……!!
そろそろあのカルピスCMの曲が発売された頃だったと思うのでどうにか入手したいと思います。歌うぞー、ガラじゃないけどー!
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