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(続き)

明日はネカフェにでも行きたいが……外は暑いんだろうなぁ……。
ああでも立ち読みにも行きたいからなぁ。
そしてカラオケにも行きたい。
これは一人カラオケフラグか?


以下、前回の続き。読み難くなるから前回の分とくっつけてます。
アーデ→ロックオン話。多分完結。
あ、そうそう。
数日フライングで勝手にリョウコさん誕生日おめー!!
この程度しか想い浮かばなんだ、自分のノマカプ脳じゃ……。



*****
 低く、耳元を撫でていく声だ。所在の判らない心と言うものが温められる気がする。瞑った瞼の裏では、彼はいつも困った様に笑っていた。
(気を揉ませてばかりいたからな)
 それでもその人の目は逸らされることはなく、嫌悪に縁取られることもなかった。



林檎と海の末裔



『アーデさんアーデさんっ、ちょっと困った事になっちゃいましたです!』
「どうした?」
 焦った声は手元の機器から沸いている。まだ幼い、高い声色。稚い容姿の割りに優秀な少女がやたらと慌てている。その事実にティエリアの返答は速かった。
「分かった、今からそちらへ行こう」
 お願いします、を十分に伝え切らぬ内に通信は早々に切られた。余程に切羽詰まっているらしい。丁度彼もブリッジへと向かうところだった。歩調がやや速められる。
 ふう、と肩を上下させる吐息に不快の匂いは混ざらなかった。それどころか、上げられた貌は口元に柔らかく笑みを刷いてすらいる。そんな人間臭い仕草に、ティエリアが自身で気付いてもう日も浅くない。周囲で目にしている誰より先に、彼自身が認識していた。
 何度も言い聞かせられた言葉がある。以前、四年前はその度に反発していた。僕を一緒にするな、と。
(僕は、人間だ)
 戦いの最中、自分自身で辿り着いた。今はそれを嬉しくも誇りにも思っている。彼と同じ、人間。
 ミレイナと話をしていると、あの頃の彼もこんな具合に感じていたのだろうかと、頭の隅でティエリアは考えた。いや、もっと苦労は絶えなかっただろう。何せ彼はティエリアだけではなく、四年前の刹那やアレルヤの世話も焼いていたのだ。ミレイナ一人の比ではない。そんな事を追想すると、ティエリアは可笑しくて堪らなくなる。
 以前のティエリアならば、子供臭さの濃いミレイナの言動に自分を棚に上げて眉を寄せていたのだろう。しかし今は、人懐っこく笑い掛けてくる少女を可愛らしく思える。そんな自分が、また更に可笑しい。
 ふと、懐かしい声の幻が頬を掠めていった。しょうがないな、と言いたげな体温で武骨な掌が頭を撫でる。苦笑は柔く、眼差しは慈愛に満ちて。
 情けなくも子供だった四年前、それでもいつしか自分たちは仲間になっていた。彼が、全て繋いでくれていた。目覚めさせた。
 あの時の彼と同じ事をしようとしているのか、ティエリアは自分でも判然としなかった。自分には彼の様な真似は出来ないと弾く思考もあり、しかしまた、このままではいられないと感じている己もいる。刹那と合流した今、これからだ。
 そう自覚し直すと、その度にうっそりと首を擡げてくる存在がある。眼鏡の奥でティエリアは目を眇めた。緑の制服を纏った、長身に緩い巻き毛。刹那の連れて来た新たなマイスター、彼の半身。
 確かに刹那の言う様、彼ほどもう一人のマイスターとして相応しい補填人材はいないのだろう。実力云々を判じるべきなのは承知しているが、全くの似ても似つかぬ別人に来られても違和は沸き起こる。
 それでも、ともすればティエリアは口をついて出そうな台詞を抱えていた。余りに子供の発言に過ぎて、とてもではないが口を割れない。
(こう言うことを、「修行が足りない」と言うのだろう)
 ――それは貴方の色ではない、などと。
 何にしても、ティエリアにはライルと言う男の軽薄な言動が鼻についた。かと思えば、存外に無味乾燥な一面も見せる。彼とは似ていない、安定しない、鼻持ちならない。それがティエリアの、ライルへの印象だった。だが例えば、刹那が連れて来た人物が容姿だけでなく内面も彼と似た者だったとして、それはそれで素直にティエリアが受け入れられたか否かは断言出来なかった。
 思考がそういった堂々巡りを終えた頃、ティエリアは深く息を吐き出す。落ち着け、と声にのせて唱えた。
(我儘や癇癪は子供のする事だ、今更そんな真似をしてどうする)
(受け入れろ、理解しろ。少なくとも出来るよう努力を――彼の様に、広く)
 そんな言い聞かせは、ライルから人を揶揄する台詞が出る度にぐらぐらと揺れる。落ち着け、とまた繰り返しながら、引き攣った顔の下でティエリアは生前の彼の苦労を思い知るのだった。
 彼からは沢山のものを教えられ、与えられた。それは何物にも代え難く、今となってはティエリアを支え、構成する多くにもなっている。感謝している。思慕は募るばかりだ。
 出来得るならば、彼自身に返したかった。それはもう叶わないから、ならば仲間にへ、と考えた。その「仲間」の区画には、当然彼の半身も類される。仲間だと思っていない訳ではない、認めていないのでもない。
(しかし、合わないと言う事もあるにはあるだろう!?)
 ティエリアは誰かに同意を得たかった。刹那辺りなら或いは――そこまで考え、駄目だ駄目だこんな事では駄目だ、と首を振る。考え直すが、途方も無いには違いないとしか、この時のティエリアには思えなかった。

 だが、「その時」は訪れるものだ。奇しくも哀しく死を連れ、ライルの慟哭の傍ら、ティエリアは深く謝辞を抱く。

 薄闇に取り込まれた一室は、己が胸まで埋めていく。塞がれた喉は今と過去の痛みを繰り返している。
 一人、と言って良いのかティエリアには断言出来ないが、それでも敢えてそう言いたい。一人のイノベイターの死に、泣き苦しむ姿が目の前にあった。緑の服を纏う男の背中は、震えて小さくすら映る。
 硬い拳は何度も刹那の顔を殴りつけた。刹那の判断は彼以外の誰もが否定せず、その誰もが間違っているとは口に出来ない。しかしまた、刹那でさえも泣く彼を言い募ることも出来ないでいる。
 あの拳には覚えがあった。ティエリアは肉を殴る鈍い音を耳の遠くで聞いている。ティエリア自身のその拳も、また同じ様に刹那の頬を痛めつけた。その言動の正否など、考える隙がどこにも見当たらなかった。
 咽ぶ涙は耳にも胸にも痛かった。未熟だった自身が思い返され、情けなくもあり心苦しい。ライルも分かっている、いや少なくともいずれ分かるのだろう。大波の最中では喪失以外、何も見えない。
 そしてまた、ティエリアは苦痛の他を見出していた。ライルの哀しみと零れる言葉の端々に、自身さえへの救済と恩愛を感じ取っている。
 今そこで苦しむライルの姿は数年前のティエリアであり、ライルが想い、泣く対象もまたティエリアと成り得る。彼女はティエリアと同じイノベイターだ。
 初めに、ティエリア自身より先に認めてくれたのは彼だった。何度も繰り返し言い聞かせてくれた。それらの言葉と慈愛があったからこそ、ティエリアは自身を人間だと認められた。しかしそれでも疑念が沸き上がらない訳ではない。物理的な存在として、ティエリアは敵である彼らと存在を等しくしている。己への不審、それから、仲間の目への恐れ。現在のティエリアは、仲間である者達に不信の気配を見付けたとしたら、きっと傷付く。
 そんな惑いを、ライルの涙と声が少しずつ拭っていく。
(……そう、きっとライルと彼女なら変わる事が出来た)
 それがどうしようもなく、間に合わなかったのだとしても。彼女もまた、人間と近付き、人間と解り合い、人間を愛した、「人間」だ。この場の誰もが、最早疑ってなどいない。
(掬い上げてくれるのは、いつもロックオンだ)
 彼ら双子を同一になど考えていない。それぞれの個性があり、容姿以外似ても似つかないとさえティエリアは思っている。しかし、こう言ったところは同じだ。イノベイターを人間へと変えてくれる。
 鳴り止まぬ嗚咽が世界を占める。その人間であるが故の悲哀に、ティエリアは深く感謝していた。




*****
林檎の海の末裔/00、ティエリア視点で対双子
つまりは人間、ってことを言いたかった。タイトル含め。

ウィルス落ち着くまではブログで更新のが良いんだろうな。こっちのが作業は楽だし。
……でも読み難いんだよね、やっぱり。
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