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久々に書く。



 雨の中の溜息は白く凍えた。こんな日でも自分は血を流している。

 まだ夕暮れにも早い昼下がりだと言うのに、街中に人影は見当たらない。朝から降り始めた雨のせいで、人々の足が鳴りを潜めてすっかり久しく感じられる。遠巻きのアーケードも、霧とも靄ともつかない視界の悪さでまるで外界の話だ。
 は、と短い息が喉を走る。肩が上下する拍子に、いい加減伸びた前髪から雨粒が滴り落ちた。鼻筋を掠め、じわりと唇を伝う。口内に浸み入られる感覚に、アスランは唇を引き結ぶ。次いで鋭く吐き出せば、足元を沈める一面の湖に赤黒い異物が起こる。
 酷く寒かった。灰色の景色が冷えと供に世界を埋め尽くしている。
 この雨のためか、はたまた度重なった衝撃のためか、耳奥のイヤフォンも先から音が死んでしまっていた。無音で落下する水滴と、それが地面で跳ねる音と。それから自らの呼吸と心音。鋭敏になった神経に障り、煩わしさに苛立ちが生じる程だった。右腕だけが膨張した様に熱く、そこの血流が真因だとは思いたくなかった。
 悴んだ指を解き、手の中の凶器を放そうとするが、想像以上に困難だった。鈍く重い塊は指先を見捨て、落ちる。跳ね上がった水面が血溜まりを薙ぎ崩した。しかし更に、止まぬ血潮が銃身にも降りかかる。
 吐き出される息が熱い。寒くて堪らなかった。
 アスランは己が腕を抱きながら腰を落とした。大した勢いも無かったが、途端その身体は重力に負け、投げ出された。仰いだ貌に雨が無力に刺さる。
 前しか見てこなかった。そうして直走り、訪れた今日だった。決勝線でも希望でもない、あと何度繰り返すかも分らぬ通過点の一日。それでも忘れた日は無かった。一度として忘れられなかった。
 彼にとっての何かが始まった数年前のその日。何をしていたのか、アスランは良く覚えていない。それでも、こんな凍えた日ではないのは確かだ。あの場所にそんな気候は存在しなかった。
 しかし指先から頭の奥から、胸の底まで。確実に凍りついた感覚は覚えている。一瞬の間ではない。じくじくと、吸気に加速度を伴って重く打ちつけられていく。彼にとっての誰かが死に、彼の中の何かが死んだ。
 空いた口で呼吸を繰り返せば、細かい粒が飛び込んでくる。血の味が舌根に不味い。
 動きそうになかったのは冷えた指先だけでなく、撃たれて重い身体だけではなく。こんな所で立ち止まる気も無かったが、申し訳無くもアスランは打ちのめされた。誰かの足音など遥か遠く、そこに在りはしなかった。
 薄く開く濃緑の双眸が望んでいる。彼を求めて伸ばされる一つの手を。
 流れ出る血の不快感に、亡き人の最期を想った。されど欲しがった手は、慎み無くも異なる体温をしていた。



*****
「静寂の外の耳鳴り」/種ザラ。多分ライブラ設定(「サナギ~」参照)(……参照?)

VDも近い事だし。……のっけからすんません。
実は種でVDネタって初めて書く。もうシリアスも甘いのも書き尽くされた感が……。
きっとこの後、↑のザラはルコウ辺りが迎えに来る。気分もあって本人的にはダメージ大なつもりでも実際には腐ってもコーディ、大したこと無かったり。
精神的な面も、その後の治療中とかにTVとかで追悼演説とかで見たりして回復するんだきっと。そういう奴な気がする。このザラは。

よく人から「CP創作なのに(受けと攻めの)片方しか出て来ない」と言われます。そうだろう。
AのいないとこでBがAのことを語らうだとか、若しくはB自身を吐露するだとか。前者の場合はAが攻めに限り、盗み聞きしてたりとか。後者だったら、攻めAはBの吐露する一面なんて思いもしなかったり。受けAの場合は、Aは結構察しがついてたり。
そういう状況下の会話とか成り行きとか雰囲気とか考察とかが好きです。そう、考察し易いんだ多分。
そんなもんだから、どれもこれも似た構造の話にばかり……。加えてシリアスに限るしな。惚気なんて書けない。

まあ、ぽつぽつと書いていこうと思います。リハビリとまで言わないけど。書いてなったけどそうと意識する程離れた気も無く。読みまくってただけだけど。
↑のと同じモチーフでカガリネタも書こうと思ってます。
2月からまた急がしくなるくさいですが……ぽつぽつと、好きに。
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