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うおおぉお


あかく咲く声、文庫版買ってしまいました。やはり。
内容はコミックスと変わりなく、おまけとか書き下ろしとかも特には無かったんですけど、今の緑川先生の絵柄での二人は拝めたかな。
あーでも期待もあっただけに書き下ろし無かったのは残念ではあったんだけど、最後の最後にきた。
辛島の下の名前が判明……!!!!!
よ、予想外だった! 予想外過ぎた……!!!
イニシャルは分かってたけども、そうくるとは…………!!
いや、うん……意外だ。正直意外だ。
にあ……う、のか? いやでも先生が仰るんだし。
おおう、何か何だか興奮が、再燃が(笑)。
変わらないと思ってた緑川先生の絵も、こうして見ると変ってるんだなぁ、と。夏目だけなのかなーとか思ってたんだけど。あの目とか。
自分は緑川作品であかく~が蛍火と並び一番好きなので(現時点)、その絵柄が一番しっくりくると言うか、辛島だなぁ、国分だなぁ、って思う気がします。早い話が好みなんでしょうけど。
でもそもそも緑川先生の絵が既に好みだからな。


今、諸事情があって胸にサラシを巻いてます。でっかい包帯なんですけども。
……しかし、世の男装女キャラはこんな苦しいきつい思いをしてるのか、と。こんな時でもそんな事を考えてしまう。
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世界の下 2

誰の為のさよならを



 ――見付けた。声など聞こえなかった。
 未だ炎と煙の巻き上がる世界は、つい数時間前の美しい様を思い起こす事も出来ない。無残に横たわる鉄骨を超え、その後ろ姿を追った。名を呼ぼうかと口を開きかけるが、どうにか躊躇うに成功した。聴覚を奪う爆音に塗り潰され、どうせ声は届きはしない。寧ろ存在を知らせてしまう危険があった。彼と、彼女の。
 疼く痛みが忌々しい。舌を打ちながら、アスランは負傷した足で走っている。漸く見付けた姿は、まだ小さく距離があった。彼から見るに、彼女以外の者、詰まる所、彼女の周囲に居た警備等は全滅してしまったのだろう。若しくは彼女を逃がし、己は身を呈して敵と対した、か。彼女は一人、身を隠しながら進んでいる。
 耳のイヤフォンには呻く様な声が細々と届いていた。電波状況は最悪だ。ブツブツと途切れる回線は、それでもどうにかカガリの音を拾っている。拾うばかりで、こちらからの声は届いていない。遠くの後ろ姿を見る分には、怪我をした様子は無かったが、彼女の声は酷く苦痛に満ちていた。ここからでは見えない箇所に傷を負っているのかもしれない。
 ふらつきながらもカガリの足取りは確かだった。向かう先は分かっていた。この国の陣営本部。そこになら彼女と共に来たオーブの兵だっている。あちらも必死にカガリを捜索しているだろう。合流してしまえばいい。問題はそれまで、辿り着くまでだ。
 敵の数も分からない。一人で乗り切れるか。
 無論、カガリを一人で行かせる気は無い。距離も大分詰めていた。彼女が振り向けば、呼び止めずともアスランの目は表情を確認出来るだろう。白い服も金の髪も薄黒く汚れていた。胸の位置で握られた両手の中には、黒く光る銃がある。その手の凶器の存在には、いつだって目を顰めずにはいられなかった。
 目の前に聳える瓦礫の山にカガリが頭上を仰いだ。次いでゆるりと辺りを見回す。空は黒い雲に覆い尽くされ、光は届かない。カガリの顔を照らすのは赤く燃える炎の色だった。滾る橙を反射し、小さな粒が頬を滑り落ちる。アスランは知った。カガリが泣いていた。

 合点がいく。左耳に届くこの呻き声は、傷や怪我の所為ではない。嗚咽、涙の為だ。
 アスランは状況を忘れて立ち尽くす。久しく目にしていない彼女の涙ではあったが、それでも余りにも無知だった。いや、忘れていたのか。数年前、己が彼女の護衛として側に在った日々。何度も彼女の泣き顔を見ていた。それは堪え切れぬ悔しさや、無力に打ち震える姿であって、あんな、声を上げて泣く彼女ではなかった。幼子の様に喚き、絶望し、叫ぶ。ただ嫌だ嫌だと首を振り流す涙など。
 あんな泣き方をする人だっただろうか。カガリと言う人間は。
 記憶を巡らすが、上手く頭が回らない。一人では泣いていたのだろうか、あんな風に。若しくは自分では無い――他の、例えばもっと近しい者の前でなら。考え、アスランは胸からせり上がってくる何かに喉を塞がれた。重い、苦しい。
 炎を見上げるカガリの目は暗く、そして厳しかった。拳が剥き出しのコンクリート壁に打ち付けられる。
『な、っで……いつ、もいつも…………っ!』
 イヤフォンに籠り、響く声。泣いている、ないている。そうして再び、アスランは知る。己の身勝手を。
 彼女にとっての自分の価値を、この頭が、心が、この瞬間ですら考え出そうとしていた。過程など踏まず、自動に。けれど多分、そんな事では無いのだろう。そして恐らく、そこだ。
 カガリが渇望する人を、必死に飲み込んでいる呼ぶ声を、アスランは聴いた気がした。それは彼女にとっての平和の象徴であり、幸せの源でもあった。亡き人、尊大な人。カガリは戦っている。もがき、自分の足で進もうとしている。その姿はずっと前から変わらなかった。
(なのに、俺ときたら)
 考えていることがあった。何故カガリは自分の気持ちを受け入れてくれないのか。
 アスランの告白を、想いを、カガリはいつも流した。答えもくれなかった。色恋に興じていられる状況ではないのは確かだが、拒絶すれば他の物事、彼女の目的が、世界が上手く動く訳でもない筈だ。それはカガリだって分かっている。それなら――それなのに本当はカガリが、アスランがこうしてオーブの軍属にいるのを厭っている事を、アスランも知っている。自由になれ、と、彼を遠ざける双眸が願っている。
 分からなかった。「どうして分かってくれないのか」、を。
 知らなかったから。いや、それも自分が弱かったからに他ならない。アスランの脆弱な部分をアスラン自身に気付かせない、カガリの優しさに甘えていた。カガリはそんなつもりはなかったのかもしれないが。
 今の今まで、許されてきた自分。過去の裏切りに近い言動も、「世界の為を考えて真剣に悩んで動いただけだから」と、「私も無力だったから」と、理解され、許された。満足などしていない、後悔した。だがそれも甘えていたのだろう。「間違った選択をした」、そのことではない。「許された」ことでもない。罰を受ければ済むとも思っていない。許されたことを甘受している――その実態だ。
 カガリの思考を超えていないのだ。アスランへの自由を願う彼女に、アスランはそれを打破する想いを、真実を打ち付けていない。強く、辛辣な程に、分からせてやっていない。アスランこそがしなければ、カガリも他の誰も知らない真実なのに。
(俺の世界は、変ったんだ)

 カガリには余裕が無い。アスランの為を思うアスランの自由が、きっと彼女の本願に他ならないのだから。
 彼女の余裕の無さは、即ちアスランに余裕が無いからだ。彼女を安心させるだけの、己の脆弱を乗り越え塗り潰してしまう程の決意と姿を示していないから。その強さが無いから。
 酷く瞭然とした。視界も、思考も。すべき方法と目的の為の目標が見えた。
 距離の縮まったカガリは、瓦礫を回り込んで前進しようとしているところだった。先程より表情が明確に見える。物理的に近付いたからなのだが、自分の心理がずっと明瞭に見せている気がした。
 至極思い知った。どれ程愛おしいか。切望しているのか。
 護るだけではない。側に居るだけでは足りない。癒し支えるだけでなく、もっと峻烈なまでに奮い立たせる存在になりたい。そうやって、咽び泣く程の。
 未だ頬は涙に濡れている様だったが、イヤフォンからの嗚咽は消えていた。代わりに少し荒い息使いが聞こえる。両手を伸ばし、カガリは瓦礫を超えていた。払われた髪先の隙間から、熾烈な眼差しが覗く。急激に襲う愛しさに胸を焼かれ、喉が急き立てられた。
「――カガ、リ……」
 名が、零れていた。夢現の声。にも拘らず、イヤフォンの向こうの気配が鋭く息を呑んだ。



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